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【食道をゆく】酸梅湯(スワンメイタン)~北京市~

酸梅湯(スワンメイタン)~北京市~

暦の上ではまだ春なのに、すでに蒸し暑い台湾の夏。この季節になると、酸梅湯がとてもよく売れる。

烏梅に甘草、サンザシ、氷砂糖などを煮詰めて作るこの梅ジュース、ミネラルやビタミンが豊富で抗酸化作用や疲労回復効果があり、夏バテ対策にピッタリの飲み物なのだ。これが生まれたのは今より1000年以上遡る、清の時代だ。

そもそも清朝を興した満州族は、酸っぱいものを好む民族だった。彼らは狩猟民族のため油っこい肉料理が多く、これと食べ合わせるために「酸湯子」というトウモロコシの粉から作った酸っぱい麺を発明した。

その後、酸湯子は満州族の手によって北京に持ち込まれたが、酸湯子はトウモロコシの粉を発酵させて作られるため糖分が高く、過剰に摂取すると脂肪へと変わり、太ってしまう。そこで第6代皇帝の乾隆帝が、食べ合わせるものをさらに研究するよう言いつけた。
命を受けた料理人たちは知恵を搾り、ついに酸湯子に替わる飲み物を編み出した。これが酸梅湯だ。
乾隆帝はこれをいたく気に入り、しばしば飲んでいたという。

中国を代表する古典小説「紅楼夢」にも、主人公・賈宝玉が酸梅湯を好んで飲んだというエピソードがある。
というのも、作者の曹雪芹は清朝の貴族出身だそうだ。

古くは貴族から現在は庶民まで、人々の胃を支えてきた酸梅湯。乾隆帝に負けじとぐびぐび飲んで、暑い夏を乗り切ろう。