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【食道をゆく】三杯鶏(サンベイジー)~江西省吉安市~

三杯鶏(サンベイジー)~江西省吉安市~

台湾の家庭料理「三杯鶏」は、元来中国江西省の伝統料理だった。
調理時に一切水を加えず、米酒と豚の脂、醤油を各1杯ずつで味を調えるためこの名が付いたのだとか。
この3杯で煮込んだ色艶と芳醇な生姜の香りに、ご飯もどんどん進む。

この三杯鶏の起源は、この地に実在した人物と深い関わりがあった――。

かつて中国は南宋末期、文天祥という軍人がいた。文天祥は弱冠20歳にして科挙を首席で合格、やがて宋朝の臣下として重用された。元軍が宋へ侵攻した時にも、文天祥は宋軍を率いて2年に渡り抗戦し続けたが、ついに捕えられ捕虜に。元朝皇帝のフビライは彼の才能を惜しみ、臣下になるよう求めたが、文天祥は断固としてこれを拒んだ。文天祥の生存が反乱軍の士気を高めてしまうと考えたフビライは、やむなく彼の処刑を決めた。

今か今かと処刑を待つある日、1人の老婆が処刑された文天祥に捧げる鶏と酒を持って牢獄を訪れた。しかし生きている彼の姿を見ると、老婆は持っていた鶏を切り、3杯の米酒が入った壺の中に入れ火で炙って食べさせた。文天祥は亡国を嘆きながらこれを食べ、その後処刑されたという。
それ以来、文天祥の命日にはこの料理を食べるのが習わしとなり、3杯の米酒が後に米酒と豚の脂、醤油に変わり、現在の形で受け継がれることとなった。

台湾ではこれに台湾バジル「九層塔」を加える。豊かな香りを味わいながら、英雄の最後の晩餐をいただこう。